認定内科医試験では受験資格として、救急蘇生講習の受講が必須ですが、第28回認定内科医試験より、救急蘇生講習会としてJMECCが推奨されています。(あくまで推奨であり、2017年度の段階ではICLSやACLSでも可となっています。)
今回はその「JMECC」のインストラクターの資格取得方法について説明します。
JMECC(ジェイメック)ってなに?
まずJMECCとは、Japanese Medical Emergency Care Course(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会)の略であり、日本内科学会による救急蘇生講習のことです。
ICLSと異なるところは、「ICLSを基礎として、心停止時のみならず内科救急にも対応できるようなプログラムを導入」しているところです。つまり、
• 初期ABCD評価
第一印象(重症感) / Airway(気道) / Breathing(呼吸) / Circulation(循環) / Defibrillation(除細動)
• 二次ABCD評価
Airway(気道) / Breathing(呼吸) / Circulation(循環) / Differential Diagnosis(鑑別診断) SAMPLE、 OPQRST history 等
これらが導入されているところが、JMECCの特徴といえるでしょう。
インストラクターになると役に立つこと
私がJMECCインストラクターを取得しようと思ったのは、内科医の先輩に、「持っておくといいかもよ〜」と言われたことがきっかけでした。大分安易です笑。これは、認定内科医試験で今後JMECCが必須(現在はICLSでもACLSでも可)となるかもしれないという予測による、アドバイスでした。
しかし、始めてみて思ったのは、インストラクターになることの一番のメリットは、「自分の勉強になる」ということです。人に教えるのが一番勉強になります。これは知識面でもそうですし、「プレゼンテーション能力」、「コミュニケーション能力」の面でも大いに勉強になります。プレゼンテーション能力といっても、インストラクターがひたすら喋り倒すのは良いインストラクションとは言えないので、あくまで「相手に考えて答えてもらう」「相手に興味を持って聞いてもらう」「相手に理解してもらう」を含む、会話のキャッチボール・スキルです。これは医療の場面だけでなく、人と接するすべての場面で役に立ちます。
しかも、JMECCは若手医師だけでなく、年配の先生方も指導者となるために受講されることも多いので、「多様な相手に合わせた」コミュニケーションスキルの勉強にもなるわけです。

Startup Stock Photos
そしてもう一つのメリットは、「色々な人と繋がりができる」ことです。講習会で何度か顔を合わせると、自然と顔や名前を覚えて貰えたり、人と人とが繋がっていきます。医療業界は狭いので、こういった繋がりから何かいいことが生まれる可能性は多いにあります。
また、数ある救命蘇生講習は、2日間であることが多いですが、JMECCは1日で完結します。仕事やプライベートの都合上、2日間は空けるのが難しい、でも1日なら空けられる、という方にもJMECCはおすすめです。
インストラクター資格取得方法、手順
では実際のなり方とは?
まずインストラクターを目指す前に、認定内科医もしくは総合内科専門医の資格を取得しておく必要があります。これらについては日本内科学会HP(http://www.naika.or.jp/nintei/)をご参照下さい。
次に、下のフローチャートを見て下さい。

(JMECC公式HPより引用http://jmecc.net/?page_id=191)
JMECCインストラクターになるには、3つのルートに分かれます。
①ICLS・ACLSともインストラクター資格のない人
②ICLSインストラクター資格を有する人(またはICLS・ACLSともインストラクター資格を有する人)
③ACLSインストラクター資格を有する人
3つのルートの流れを説明していくと、
①ICLS・ACLSともインストラクター資格のない人
JMECC受講→指導者講習会受講+ICLSもしくはJMECCアシスタント参加3回以上(うち2回はJMECCであることが必須)→ICLSインストラクター申請→ICLSインストラクターに認定、番号を通知されてから→JMECCインストラクター申請
②ICLSインストラクター資格を有する人(またはICLS・ACLSともインストラクター資格を有する人)
JMECC受講は必須ではない→指導者講習会受講+JMECCアシスタント参加2回以上→JMECCインストラクター申請
③ACLSインストラクター資格を有する人
JMECC受講→JMECC指導者講習会受講+JMECCアシスタント参加2回以上→日本循環器学会または日本ACLS協会に連絡→ICLSインストラクター申請→ICLSインストラクターに認定、番号を通知されてから→JMECCインストラクター申請
となります。
私は ACLSインストラクターの資格を並行して取得していましたが、③ルートだと事務処理にかなり時間がかかってしまったため、結局は①のルートでインストラクター資格を取得しました。(③ルートだとアシスタント参加2回で申請できるのですが、学会をまたいで申請するため、時間がかかってしまい途中で3週間程度進展なく過ぎてしまったため、アシスタントにもう1回参加(計3回)し、①ルートで申請しました。)
申請やら事務的な手続きも含め、実は結構面倒で時間がかかります。最初の受講から、インストラクターになるまで半年以上かかりました。
どこが律速段階になっているかというと、
- アシスタント参加◯回以上(ルートによって違う)をこなすのが大変
- ③ルートの場合、事務処理に時間がかかる(私のケースのみかもしれないので再現性は不明です)
というところです。
私の場合、アシスタント参加は4回応募してやっと1回当選したくらいの倍率でした。(あとの2回は自施設で主催したときにアシスタントをさせてもらったのです。)同じ施設でも、「応募してもなかなか当選しない」と嘆いていた人がいるので、倍率は高いと想像します。しかし、別施設に勤務する人で初回の応募で当選した人もいました。これはJMECC公式HPにも、
- JMECC においてアシスタントインストラクターを既に1回以上ご経験されている。
- 所属施設にJMECC ディレクター・JMECCインストラクターが1名以上在籍している。
のいずれかが当てはまる人に関してはアシスタントの「当選確率が低くなる」と記載があり、当選率に差があると思われます。
よって、もし自施設にJMECCディレクター・インストラクターが既にいる方は、とにかく応募しまくることをおすすめします。
そして大切なのはお金ですが、
最初の受講料:20,000円
指導者講習会:20,000円
アシスタントインストラクター:無料
他、交通費など諸経費です。
まとめ
以上、JMECCインストラクターのなり方について説明しました。
自分の経験からJMECCインストラクターは、
- 資格取得には時間と手間がそれなりにかかる
- しかし「知識面」「プレゼン能力」「コミュニケーション能力」の
勉強になり、
- 「人との繋がりができる」ため、
- 内科救急、蘇生講習に興味があり、
- 2日は難しいけど1日ならインストラクター参加が続けられそう
という方にはより、オススメします。
コメントを残す