こんにちは、Fです。
7月1日に医療者のためのコミュニティスペース「イシテラス」で開催された「心エコー」の勉強会に参加してきましたので、非循環器内科医に向けてレポートします。
内容をざっくり知りたいという方は2つ目の「メニュー①」から読んでいただければ勉強会の内容は把握できます。特に初心者のFには③と④がとても勉強になりましたのでオススメです!
スライドは「医療者のためのナレッジ共有 “Antaa Slide”」に掲載されていますので是非ご覧ください。
【目次】
- 心エコーって
- メニュー① 経胸壁心エコーでわかること
- メニュー② 経胸壁心エコーを使う場面
- メニュー③ 経胸壁心エコーで見える断面は何をみているか
- メニュー④ 経胸壁心エコーのレポートをどう解釈するか
- メニュー⑤ 経食道心エコーと経胸壁心エコーの使い分け
- メニュー⑥ 経食道心エコーで見える断面は何をみているか
- 次回予告
心エコーって
医学部高学年以上の人にとっては当たり前かもしれませんが、心エコー検査とは心臓超音波検査のことで、専用の装置から高い周波数の音(超音波)を出し、その反射で心臓の形や動きをみることができます。
医師として働くといろいろな場面で心エコーと出会います。例えば僕は整形外科医なのですが、手術前の患者さんの評価のひとつに”心臓の機能”が含まれていて、心エコーで評価を行います。
ですので、研修医にとっても非循環器内科医にとっても心エコーはきっても切れない縁があり、どの科にいっても心エコーを理解することは自分の患者さんを把握する上で役に立ちます!
今回、循環器内科の福田先生が初心者、非循環器医向けに最低限どんなことを知っていたらよいか、心エコーの結果をどう解釈するかというノウハウを90分でわかりやすく解説してくれました。
メニュー① 経胸壁心エコーでわかること
経胸壁心エコーでわかることはおおまかにこの4つです。
- 心腔内部の形態、大きさ
- 壁運動、収縮率
- 弁の形態、弁膜症
- 血流速度、波形、圧較差
例えば心臓に何らかの負担がかかると左房が大きくなったりしているので「心腔内部の形態、大きさ」をみる必要があるし、心筋梗塞では壁運動の動きが悪くなるので「壁運動」をみる必要があります。心エコーを理解するということは、この4つの所見をどの疾患でどのように組み合わせてみるべきか、を学ぶことが近道のようです。
それでは次のメニューにいってみましょう。
メニュー② 経胸壁心エコーを使う場面
現場で行われる経胸壁心エコーはどんな場面で行われているかというと
- 自覚症状の原因精査
- 心機能・体液量を知りたいとき
- 心電図異常の原因精査
- 心雑音精査・弁膜症評価
- 胸部レントゲン異常の精査
の5つの場面があります。特に最初の2つが重要になります。
例えば救急外来では「胸痛」「呼吸困難」「浮腫」「ショック・低血圧」「徐脈」「失神」などの自覚症状の原因検索でくる患者さんで、また病棟では「周術期管理として」「大量補液前に」「心不全の管理に」など心機能、体液量を知りたい患者さんで心エコーが必要です。
ではこのような場面を想定し、最初に学んだ経胸壁心エコーでみることができる4つの所見をどうやってみていくのか、次のメニューにいってみましょう。
メニュー③ 経胸壁心エコーで見える断面は何をみているか
具体的に学んだ断面は全部で9つです。それぞれの断面で何をみているのかひとつずつみていきましょう。
1. 傍胸骨左室長軸像
この断面は心臓を長軸方向に切ってみているものです(ラグビーボールでいうと切った時楕円形になるようにするイメージです)。左房右室左室の形態や大きさ、壁運動、それから左房から左室への僧帽弁と左室から大動脈への大動脈弁の形態や弁膜症について評価します。


2. 傍胸骨左室短軸像(①大動脈弁レベル)
今度は短軸像です(ラグビーボールでいうと切った時正円になるようにするイメージです)。実際にはエコープローブを90度回転させます。大動脈弁の評価をする断面です。
3. 傍胸骨左室短軸像(②僧帽弁レベル)
短軸像でプローブを足側に振っていくと、この断面になります。右室と左室のバランス、壁運動、僧帽弁の評価を行います。
4. 傍胸骨左室短軸像(③乳頭筋レベル)
さらに足側に振っていくと、乳頭筋がみえてくる断面になります。これも同じく右室左室のバランス、壁運動の評価を行います。
5. 傍胸骨左室短軸像(心尖部)
さらにさらに足側に振っていくと、心尖部がみえてくる断面になります。ここでは主に左室の壁運動の評価を行います。2-5.では短軸像を上から見ていくことで様々な断面の壁運動を評価することができます。
6. 心尖部四腔像
今度は心尖部から見上げるようにエコーをあててみていきます。心臓の4つの部屋を同時にみることができる断面です。左室右室の動き、僧帽弁、三尖弁の評価を行います。
7. 心尖部二腔像
6.からプローブを反時計回転させるようにあてると出てくる断面です。左室の動き、僧帽弁の評価を行います。
8. 心尖部三腔像
7.からさらにプローブを反時計回転させ、左房左室の形態や大きさ、壁運動、大動脈弁の評価を行います。
9. 心窩部像
心窩部からプローブを当てると、この断面が描出できます。下大静脈から体液量を推定したり、心嚢液の評価をしたりします(心嚢液は見落としがないように他の画面でも評価することが大切ですが、穿刺するときは心尖部から描出することが多いそうです)。またこの断面はCOPDなどで描出不良な患者で、大まかな評価をする時に使用します。ASDやVSDや壁運動を評価します。
どの断面で何をみているかについて学んできました。
もう一度どういう時にそれをみるか復習してみましょう!(勉強会では、スライドの症例1〜4と、対応する実際のエコー動画で復習しました。)
例えば
- 心筋梗塞:冠動脈支配に一致した壁運動低下
- 大動脈解離:大動脈のフラップ、心タンポナーデ
- 肺塞栓:右心負荷所見
- ショック、低血圧(の一例):IVC虚脱
このような場面でエコーが有用な理由は
- 侵襲度が低い
- 手軽、すぐ結果が出る
- 得られる情報が多い
- 診断に結びつく重要な情報
- リアルタイム
の5つです。ここまできたら今すぐにでも救急外来でエコーをあてたくなりますね。
次のメニューでは心エコーのレポートについてみてきます。
メニュー④ 胸壁心エコーのレポートをどう解釈するか
非循環器医であれば、心エコーができずともレポートが正しく解釈できる必要があります。ポイントは7つです。
Dd/Ds
正しくはLVDd/LVDsですがレポートでDd/Dsで表記されていることもあります。左室の拡張期と収縮期の大きさをみています。
LA
左房の大きさをみています。糖尿病でいうとHbA1cのようなイメージで心臓に何らかの負担がかかっているということを表しています。
LVEF
心臓の収縮能をみています。
asynergy (normal/hypokinesis/akinesis/dyskinesis)
局所の壁運動の異常の評価をみています。心筋梗塞を探しにいく時にみます。
弁膜症重症度(trivial/mild/moderate/severe)
(そのままですが)弁膜症の重症度を評価しています。
TMF
拡張能の指標です。
TR(max PG), RVSP
TRは三尖弁の評価です。RVSPは右室の収縮期圧をみています。三尖弁の逆流速度と右房圧から推定し肺高血圧の評価を行います。
IVC
下大静脈径と呼吸性変動から、体液量と右房圧を推定します。
ここまで経胸壁心エコーについて学んできました。
もし自分でエコーをあてる機会があれば、レポートをつけた後上級医にフィードバックしてもらい答えあわせをすると、とても勉強になりますのでみなさん是非トライしてみてください。
次は経食道心エコーについてのメニューです。
メニュー⑤ 経食道心エコーと経胸壁心エコーの使い分け
何が違うのかというと
- 経胸壁より鮮明な画像が得られる
- 経胸壁では見えにくいところがみえる
経胸壁で見えにくいところとして左心耳があります。心房細動でできる血栓の評価をする時に行います。他には感染性心内膜炎の弁の状態を評価する時などです。
最近では経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の術中評価として使用されています。
ただ食道に挿入するので禁忌や注意する場合、また合併症があります。
<原則禁忌>
食道狭窄、食道静脈瘤、食道裂孔ヘルニア、胃・食道術後、頚椎可動性低下
<注意すべき場合>
抗凝固薬、抗血小板薬内服中、出血傾向、重症高血圧、呼吸不全
<合併症>
出血、食道穿孔、感染、不整脈
次のメニューでは経食道心エコーで見える断面について学んでいきます。
メニュー⑥ 経食道心エコーで見える断面は何をみているか
4つの操作で見る断面を操作します。
- 角度(0〜180度):断面の角度を変える
- 前屈or後屈:先端を前後屈させる
- 時計回転or反時計回転:プローブを軸に回転させる
- 浅いor深い:プローブを出し入れする
実は断面を理解するのは難しいのですが、Virtual TEEというwebサイトがあるのでここで理解するのが近道です。
http://pie.med.utoronto.ca/TEE/TEE_content/TEE_virtualTEE.html

この後、福田先生とっておきの心エコー動画をみんなでみながら懇親会となりました。
アミロイドーシスの壁肥厚、若年女性の左房粘液腫、左室血栓などなど普段見られない動画をみることができ驚きの声がたくさんあがっていました。
この動画が酒のネタ、なんてみんな勉強熱心だなぁと思っていました。
今回の勉強会では経胸壁心エコーから経食道心エコーまで幅広い内容をコンパクトにぎゅっとまとめて学ぶことができました。僕個人としてはなんとなく苦手意識があった心エコーもひとつずつ何をみているか、どんな疾患でその断面をみるのかわかってくると少しおもしろいかも?と思うことができました。福田先生ありがとうございました。
次回予告
次回は2017年7月15日の京都府立医大、デジハリの加藤浩晃先生を招聘し、国内ヘルスケア産業について学べるセミナーのレポート予定です。お楽しみに!
コメントを残す